【令和8年度税制改正】貸付用不動産の評価見直し
1.導入
令和8年度の税制改正法案が令和8年3月31日に可決されました。
多岐にわたる改正の中でも、とりわけ注目を集めているのが、貸付用不動産の評価見直しについてです。
貸付用不動産の取得は、相続税対策スキームとして広く活用されているため、
今後の相続税対策に大きな影響を与えるものと考えられます。
2.現行制度
現行制度では、財産評価基本通達に基づき、貸付用不動産の土地と建物は次のように評価されます。
土地:自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
建物:自用家屋としての評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
土地の評価基準となる「路線価」は時価の8割程度、建物の評価基準となる「固定資産税評価額」は
時価の7割程度に設定されています 。
ここに借家権等の評価減が加わることで、時価と評価額の間に大きな乖離(評価差額)が生まれます 。
令和7年11月に国税庁が発表した資料「財産評価をめぐる諸問題」に示された例においては、
銀行借入等を用いて13.8億円の貸付用不動産を購入したものの、
上述の算式による評価額と銀行借入等の債務免除を使って相続税額を0円(2.4億円減額)
として申告した極端な例が紹介されています。
しかし、この極端なスキームは最高裁において否定され、鑑定評価額に基づくべきであると示されました。
一方で、通達に基づく評価が、個別に否定されるという現状は、
「いつ、どのような場合に通達が否定されるか分からない」という不透明さがあり、
納税者の予見可能性を損なうものとして評価方法の明確化などの改善の余地があるとされてきました。
3.改正点
今回の改正では、短期間での節税を封じるため、以下のルールが提示されました。
対象不動産:課税時期(相続発生日等)前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産
(令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産に限る)
評価方法 :取得価額×80%
これまでのような大幅な評価減が認められなくなるため、
相続直前の「駆け込み購入」による節税メリットは著しく低下します 。
ただし、「一定の貸付用不動産」の範囲が明確でないことなど今後明らかとなる点も多いと考えられます。
4.まとめ
今回の改正を踏まえて今後気を付けたいポイントは次の2点です。
①「出口」を見据えた長期的な計画
相続直前ではなく、5年以上前からの早めの相続対策を検討すること。
② 既存資産の再点検
既に貸付用不動産などの資産をお持ちの方は、取得時期や取得価額などの再確認をすること。
「自分の持ち物件はどうなるのか?」「これから購入しても効果はあるのか?」など、
ご不安な点があれば、ぜひ税理士法人イースリーパートナーズへご相談ください 。
