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個人版事業承継税制を使うべきか

2024.09.24 高槻事務所

 以前のブログで個人版事業承継税制について書きました。

 

 とはいえ、手続きが複雑であるため、「わざわざ面倒な手続きをしてまでこの制度を適用すべきなのか」
という疑問があるでしょう。

 

 今回は、個人版事業承継税制を使うべきかどうかの考え方を書きたいと思います。

 

1. 後継者が本当に事業を継続するかどうか

   最も肝心な点です。先代に相続が発生する前に廃業したり、第三者に事業を譲渡したりした場合は、
  納税猶予が取り消され、贈与税の他に利子が上乗せされます。
  継続しない可能性がある場合は、引退時点で第三者に事業を譲渡するという選択肢も有力になります。

 

2. 特定事業用資産を売却する可能性がないか

   この制度を適用する際は、対象となる資産を一括して贈与する必要があり、
  土地を残して建物や機械だけを贈与するようなことはできません。
  1.で記載した通り廃業する場合、当然納税猶予は全部取り消されますが、
  「廃業まではしないが事業を縮小したいので、土地の一部を売却したい」というケースは十分ありえます。
  この場合、売却した土地部分に対しての納税猶予が取り消されます。

 

3. 小規模宅地等の特例と比較してどうか

   特定事業用資産の中に土地がある場合、個人版事業承継税制を使えばこの分の相続税が免除されます。
  一方、このような土地は小規模宅地等の特例の対象となる特定事業用宅地等に該当することも多いので、
  こちらの特例を使うという手もあります。ただし、この両者を併用することはできません。
   この時、誰の相続税を減らす効果があるかを考えてみましょう。
  個人版事業承継税制を適用した場合は事業を承継した相続人にのみ効果があります。
  一方、小規模宅地等の特例を適用した場合は事業を承継した相続人だけではなく残りの相続人にも効果があります。
   このため、事業に供していない相続財産の種類や金額、
  或いは相続人の人数によっては相続時に争いの元になる可能性もあり、
  あえて個人版事業承継税制を適用しない方がよい、というケースもありえます。

 

 複雑かつ一度適用したら後戻りができない制度であるため、
他の承継手法と比較した上で意思決定する必要があると思います。

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