令和8年度税制改正
令和8年度税制改正法が3月31日、参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。物価高への対応や設備投資の促進を念頭に、所得税の課税最低限(いわゆる「年収の壁」)が178万円まで引き上げられるほか、中小企業者等の少額減価償却資産の特例の対象が30万円未満から40万円未満へと引き上げられるなどの改正が行われています。
個人所得税
・基礎控除及び給与所得控除
これまで、基礎控除の金額は定額でしたが、物価上昇への対策として、税制改正時の消費者物価指数に応じて適時に控除額が見直されることになりました。
令和8年分及び令和9年分は、基礎控除と給与所得控除が合計18万円引き上げられるため、所得税が非課税となるいわゆる「年収の壁」は178万円(改正前:160万円)となります。
法人税・所得税
・少額減価償却資産の特例
青色申告をしている中小企業者等(個人事業主を含む)が少額減価償却資産を取得した場合、取得した年に一括で経費計上することができますが、その対象となる資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)に引き上げられます。令和8年4月1日以後に取得した資産が対象です。なお、対象事業者は従業員400人以下の事業者(改正前:500人以下)に縮小されています。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)
・インボイス事業者以外からの仕入に係る経過措置
現在は、仕入先の請求書が適格請求書(インボイス)の要件を満たさない場合、経過措置により仕入税額相当額の80%を控除できます。令和8年10月以後は、下記の期間の区分に応じて控除可能割合が減少していき、令和13年10月以後は全く控除できなくなります。同額の仕入をしていても、インボイスの交付が受けられない場合は、消費税負担が増えてしまうので注意しましょう。
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期間 |
控除可能割合 |
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令和8年10月~令和10年9月 |
70% |
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令和10年10月~令和12年9月 |
50% |
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令和12年10月~令和13年9月 |
30% |
租税特別措置等
・通勤手当の非課税限度
自動車・自転車等を利用する場合の通勤手当について、片道65km以上の場合の非課税限度額が引き上げられます。引き上げ後の非課税限度額は下記の通りです。
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片道 |
~2km |
~10km |
~15km |
~25km |
~35km |
~45km |
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非課税限度 |
0円 |
4,200円 |
7,300円 |
13,500円 |
19,700円 |
25,900円 |
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片道 |
~55km |
~65km |
~75km |
~85km |
~95km |
95km~ |
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非課税限度 |
32,300円 |
38,700円 |
45,700円 |
52,700円 |
59,600円 |
66,400円 |
法人税
・企業グループ間の取引に係る書類保存の特例
法人が関連者(持株関係、実質的支配関係等があるもの)との間で特定取引を行う場合、その取引対価の算定の根拠となる書類の保存が必要となります。特定取引とは①工業所有権等の譲渡・貸付けと②一定の役務提供のことで、具体的には、特許権や商標権を貸し付ける場合の使用料(ロイヤルティ)、技術指導料、マーケティング支援、会計・税務・法務支援などが挙げられます。令和8年4月1日以後の取引が対象です。税務調査等により、算定根拠となる書類の保存が行われていないことが明らかになった場合、青色申告の承認の取消事由となるため注意が必要です。
令和9年以後に適用される改正
・小規模個人事業者に係る経過措置(3割特例)
本来、前々期の課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の課税事業者ではありませんが、インボイス登録をすると自動的に課税事業者となり、納税義務が生じます。こうした事情で小規模にもかかわらず課税事業者となった個人事業者について、令和9年分及び令和10年分の納付税額が売上の消費税の3割となるような税額計算の特例が設けられます。
・特定の基準所得の課税の特例
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置として、令和9年分以後の基準所得金額(総所得金額及び分離課税の各種所得金額の合計)が1億6,500万円(現行:3億3,000万円)を超える場合に、その超える部分に30%(現行:22.5%)の税率が課されることとなります。
・青色申告特別控除75万円
現在、e-Taxを利用して確定申告を行うと、最大65万円の青色申告特別控除が受けられますが、令和9年分以後、下記の条件①②のいずれかを満たす場合は控除額が75万円に引き上げられます。
<条件①>仕訳帳及び総勘定元帳について、優良な電子帳簿の保存等を行うこと
<条件②>請求書等の電子取引データとの自動連携を行うこと
・ふるさと納税の控除限度
これまで、ふるさと納税の税額控除額に上限はありませんでしたが、特例控除額の上限が193万円に設定されます。令和10年分以後の住民税の課税所得が9,650万円(年収換算で約1億円)を超えると、ふるさと納税の上限額が頭打ちになります。
・暗号資産の分離課税
現在、暗号資産の取引による所得は原則として雑所得に区分されていますが、改正により、一定の暗号資産の譲渡については譲渡所得として他の所得と分離して20%(所得税15%・住民税5%)の税率が課されることとなります。この改正は、金融商品取引法の改正後に適用される予定で、早ければ令和10年1月1日以後の取引から導入される見込みです。
・貸付用不動産の相続税評価見直し
貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、令和9年1月1日以後に相続等により取得する下記の財産については、通常の取引価額に相当する金額で評価することとなります。
課税上の弊害がない場合は、下記の方法により評価することができます。
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対象 |
評価方法 |
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被相続人等が課税時期前5年以内に取得等した貸付用不動産 |
被相続人等の取得価額に課税時期までの地価変動を加味した金額 × 0.8 |
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不動産小口化商品として運用される貸付用不動産 |
事業者等が把握する適正価格 又は 定期報告書等に記載された価格を参酌した金額 |
※本記事の内容は掲載当時の法令・制度に基づいて掲載しています。
