もめない相続
相続が発生した場合、遺言がないか遺言が無効となると相続人同士で遺産の分割を行います。
「うちは財産少ないから、もし自分が死んだとしても揉めることはないよ」という方もいらっしゃいますが、
必ずしもそうなるとは限りません。裁判所の統計によると、令和元年中に発生した遺産分割事件の件数は、
遺産総額が1000万円以下の件だけで2448件ありました。分割事件の総件数が7224件のため、
約1/3が1000万以下の財産について揉めているといえます。ちなみに遺産総額が5000万円以下の場合は3097件のため、
むしろ遺産が少ないほど裁判にまで発展する可能性が高いといえます。(参考)011307.pdf (courts.go.jp)
今回は相続で特にもめる可能性が高い事例についてご紹介します。
①不動産
不動産が分割で揉める原因は、すぐに現金化ができないことや、分割して相続することが難しいことが原因とされます。
そのため複数兄弟がいる場合、長男に相続すると他の人からは不公平感が出てしまいます。
このことを防ぐために、1人が不動産を相続して、残りの相続人に現金等を支払う代償分割という仕組みがあります。
これを活用すれば、すぐ換金できないような不動産があっても公平な相続ができます。
ただし代償金をどこから調達するかという問題が発生するためご自身の猶予資金を確認しておきましょう。
②借金
相続は資産だけでなく借金のような負債も対象になります。負債の額が大きいと、資産をもらうどころか
資産以上の支払を負担することになる可能性もあります。そのような場合、相続放棄という方法があります。
相続開始を知ってから3カ月以内に申請をすれば、資産負債すべてを相続できなくなるため、借金支払いの
必要がなくなるのです。
一方で、払うのは嫌だけど自宅だけは相続したいという場合は、限定承認という方法があります。
こちらも相続開始を知ってから3カ月以内に申請をすれば、相続財産の範囲内で借金を相続できます
(300万の自宅を相続した場合、1000万の借金があっても300万の範囲のみ相続が可能)。
ただし、相続人全員の承認が必要なことと、手続きが複雑であるため司法書士や税理士等による
手続きや判断が必要になってきます。
遺言がない場合はもちろん、遺言があったとしても相続人も知らないような財産や借金が出てくる可能性もあります。
相続人同士でも事前に話し合っておくとトラブルを回避できる可能性があるので、事前の話し合いを
設けることが円滑な相続につながります。