事業承継とは
2018年に経済産業省が公表したレポートによると、2025年までに中小企業の廃業が急増し、
累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるといわれています。
また、事業承継における問題として、経営者が70歳以上の企業が約245万社まで増加し、約半数の127万社が
後継者不在による廃業・倒産の危機に直面すると試算されています。
事業の承継策などを講ずることなく事業を止めることを廃業といいますが、その際に事業者に
借入がある場合には、金融機関などの債権者に対して完済することが条件となります。
つまり、事業主は債務の返済ができない限り、廃業はできないこととなります。
と言うと、廃業を決断する会社の大半が業績不振で,債務超過に陥る前に事業を閉じる判断を
行うことが多いと思われがちなのですが、実は近年、黒字のまま廃業を選択する
中小企業の数が高水準で推移しています。
ある調査によれば、2013年から継続して廃業・解散した中小企業のうち約 6割が
黒字であったといいます。これは経営者の高齢化と後継者不在が一因といわれています。
経営者の高齢化について、帝国データバンクが実施した調査では、2019 年の社長の平均年齢は過去最高の約60歳で、
年々上昇しており、全体における50代以上の経営者が占める割合は75%以上にも上ります。
後継者不在は深刻化しており、2019年の後継者不在率は約65%でした。帝国データバンクによると、
事業承継方法の内訳では2017年から2019年にかけて親族内の事業承継は最も高いものの、年々減少しています。
後継者候補とされる中小企業経営者の子が自身のキャリアを独自に重ねていたり、
経営者である親の苦労を見ている分、事業承継に乗り気でないなど、子供が事業を引き継がない
ケースが増えています。現在、日本における中小企業のほとんどが同族会社であることから、
同族承継が年を追うごとに減り続けることは、事業承継の難しさを物語るものでもあります。
事業承継の難しさは後継者探しだけではありません。経営者が築いた様々な経営資源、
ノウハウや人材をどのようにして承継するのか。また、後継者が経営資源を引き継ぐことによって発生
又は増加する各種税負担を如何に軽減させるか。円滑に事業承継を完了させるまでに、
課題は山積といえるでしょう。
次回以降のコラムでは、これらの課題の一部を克服し、事業承継の支援となる後継者の税負担の問題の
一部を軽減することのできる制度や、後継者不在を克服するための手法についてご紹介いたします。