ローカルファイル
グローバル化の進展に伴い、海外にグループ会社や製造拠点を持つ日本企業が近年増加しています。そんな中「移転価格税制」という言葉をニュースで耳にすることがあるかと思います。
「移転価格税制」とは、海外の関連企業との取引(例えば親子会社間取引)を通じた所得の海外移転を防止するため、当該取引が通常の第三者との取引による取引価格で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度をいいます。
例を出して説明すると…
(ケース1)日本の親会社が国内にて50で仕入れた商品を、150で海外の子会社に販売し、200で海外の顧客に販売するケースを考えます。各会社とグループ合計の利益・税額は下記のとおりとなります。
|
日本親会社(税率30%) |
海外子会社(税率20%) |
グループ合計 |
売上 |
150 |
200 |
350 |
仕入 |
50 |
150 |
200 |
利益 |
100 |
50 |
150 |
税額 |
30 |
10 |
40 |
(ケース2)日本の親会社が国内にて50で仕入れた商品を100で海外の子会社に販売し、200で海外の顧客に販売すると下記のようになります。
|
日本親会社(税率30%) |
海外子会社(税率20%) |
グループ合計 |
売上 |
100 |
200 |
300 |
仕入 |
50 |
100 |
150 |
利益 |
50 |
100 |
150 |
税額 |
15 |
20 |
35 |
2つのケースでは、グループ全体の利益は変わりませんが、親子間の取引価格が変わることで税額合計が変わるという事態が起こります。移転価格税制では、ケース1が適正価格であった場合、たとえケース2でグループ間取引が行われたとしても、ケース」1の金額で取引が行われたものとみなして課税が行われることになります。
この移転価格税制は、株式等の50%以上の保有関係など、特殊関係がある外国法人(国外関連者)との間で、資産の売買・役務の提供その他の取引(国外関連取引)があるすべての法人が適用対象となります。
このうち、前事業年度に国外関連者との間で行った国外関連取引の合計額が50億円以上又は無形資産取引の合計額が3億円以上である法人は、確定申告書の提出期限までに「ローカルファイル」を作成することが義務付けられました。
なお、上記のような取引規模がないような中小企業については、確定申告期限までの作成は免除されるものの、税務調査があった際にはローカルファイルに相当する書類の提示・提出が求められますので、基本的には国外関連取引がある会社すべてがローカルファイルを準備しておく必要があります。
「うちは中小企業だから関係ない」というわけにはいきません。海外にグループ企業がある会社さんはお早目にローカルファイル作成の準備にとりかかることをお勧めします。