役員賞与支給のメリット・デメリット
役員への賞与は、会社の業績に応じて支給できる点から利益調整に利用されることを防ぐため、
原則として経費にはできません。しかし、事前確定届出給与という制度を利用することで、
役員賞与を経費として計上することが可能です。
事前確定届出給与とは、役員に対して事前に確定した金額を、指定した時期に支給する給与を指します。
これを経費として計上するには、税務署に事前確定届出給与に関する届出書を提出する必要があります。
この届出書は、役員賞与として支給する金額と支給日を事前に決定したうえで、株主総会等の決議をした日から
1か月を経過する日、または職務執行期間の開始日が属する会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか
早い日までに提出する必要があります。
事前確定届出給与を利用して役員賞与を支給するメリットの一つに、社会保険料の負担軽減があります。
社会保険料の計算において標準賞与額は、健康保険は年間573万円まで、厚生年金は月額150万円までと、
それぞれ上限額が設定されています。そのため、月々の役員報酬を減らし、役員賞与の比重を高めることで、
役員報酬のみで支給する場合よりも社会保険料の負担を抑えることが可能です。
具体的には、年間で1,200万円役員へ支給する際に、月100万円で支給した場合は、社会保険負担合計260万円ほど
になりますが、月10万円、役員賞与1,080万円を支給した場合は、社会保険負担合計120万円ほどになります。
(大阪府、39歳以下の場合)
ただし、注意点として、届出に記載した金額と支給日に従って支給しなければならず、支給金額や支給日に、
少しでも違いがある場合、その役員賞与は経費として計上が認められません。したがって、支給金額や支給日は、
資金繰りを考慮して慎重に設定する必要があります。また、役員賞与の比重を高めると、月々の役員報酬を下げる
ことが多く、その結果、月々の支給額をもとに算定する退職金も、支給できる金額が少なくなる可能性があります。
このように、事前確定届出給与を利用した役員賞与の支給は、メリットとデメリットを十分に考慮したうえで
検討が必要です。