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不動産経営を法人で行う方法とは

2024.06.10 高槻事務所 相続等の申告とコンサルティング

 不動産オーナーであれば、「賃貸不動産の経営に法人を活用することで税負担を軽減させる」、

という話を一度は耳にしたことがあるかもしれません。では、どのような方法で法人経営すれば

よいのでしょうか。3つの方式が考えられます。

 

1. 管理委託方式

 土地や建物の名義は、オーナー個人のものとし、家賃収入の集金や物件の維持管理などを法人に

代行させる方法です。外部の管理会社へ下請けに出すとしても、一旦オーナーが所有する法人に委託します。

オーナーは管理費として法人へ支払いますが、法人の売上となる一方、個人の経費として不動産所得が減少します。

法人が外部の管理会社に支払う実際の費用の方が小さければ、法人に利益が発生します。

結果的に、個人の不動産所得の一部が法人の利益に付け替えられていることになります。

 一般的に、管理会社に対して業務委託した場合、その管理費は家賃収入の5%~10%が相場です。

この水準を超える水準を超える管理費の支払は、税務上問題となるおそれがありますので注意が必要です。

 

2. 転貸借(サブリース)方式

 オーナー個人が所有する賃貸不動産を法人へ賃貸し、その法人が入居者へ賃貸する方法です。

この場合、法人が賃貸不動産を一括で借り上げることになり、法人は、入居者から賃貸収入を得る一方、

オーナーに対して賃料を支払います。前者よりも後者の方が小さければ、法人に利益が発生します。

この場合も、個人の不動産所得の一部が法人の利益に付け替えられていることになります。

 一般的に、法人が転貸借を行った場合、法人の利益率は満室だった場合の家賃収入の15%前後が相場です。

この水準を超える利益の計上は、税務上問題となるおそれがありますので注意が必要です。

 

3. 不動産所有方式

 不動産を個人ではなく法人が所有して賃貸経営を行う方法です。土地の上に建物を新たに建築する場合は、

自分の法人に建物を建築させればよく、すでに個人で建物を所有している場合は、

建物を個人から有償譲渡又は現物出資すればよいことになります。

 この不動産所有方式は、所得税と相続税の両方にあります。所得税は累進課税で所得が高ければ

高いほど税率が上がります(住民税を含めると最高で55%)が、法人税は一定の税率(概ね30%程度)のため、

税率差を利用した節税が可能です。また、法人から家族に給与を支払うことで所得の分散効果を期待できます

(同じ1,000万円の給与でも1人に1,000万円支払うのと2人に500万円ずつ支払うのでは、後者の方が所得税は安くなる)。

一方、相続税についても、建物を法人所有とすることで、相続財産は賃貸不動産から法人の株式に変わり、

一般的には相続税評価を下げることができます。

 

4. 個人から法人へ建物を移転するときの注意点

 以上のことから、「不動産所有方式」がもっともメリットがあるように思えますが、注意点もいくつかあります。

・移転時の譲渡所得

 まず、移すのは建物だけであって、土地は移さないことが一般的です。これは、

土地の譲渡所得の税負担が重くなることが多いためです。また、建物の譲渡価額は適正な時価で譲渡する必要があります。

一般的には帳簿価額を用いて、譲渡所得をゼロとすることも多いですが、法人がそれだけの

買取資金を支払う必要があります。

特に設立したばかりの法人は資本金だけでは足りないケースも多いため、分割して返済していくことになります。

・移転コスト

 登録免許税、不動産取得税、司法書士報酬などが発生します。また、もともと個人で

消費税の課税事業者である場合は、建物の譲渡も消費税の申告に影響するので注意が必要です。

・借地権に関する権利金と地代設定

 建物を所有する法人は、借地権を持つことになりますが、地主となるオーナー個人に対して

権利金の支払を行われることは通常ありません。そこで法人は税務署に対して土地の無償返還に関する届出書」を

提出した上で、通常の地代(一つの考え方としては固定資産税の3倍以上)を支払います。

この検討を忘れると、相続発生時に土地や株式の評価を思ったよりも下げることができなかった、

という場合があります。

・移転したのに株価が高めに出るケース

 建物を法人へ移してから3年以内にオーナーの相続が発生すると、その法人の株式の評価上建物部分が

高めに評価され、結果その株価自体も高くなる可能性があります。

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