令和5年度税制改正 ~相続時精算課税制度~
2023.07.10
高槻事務所
相続等の申告とコンサルティング
令和5年度税制改正では、贈与税に大きな改正が入りました。
前回は、暦年課税による生前贈与加算期間の見直しについて書きましたが、
今回は贈与税のもう一つの制度である相続時精算課税制度の見直しをお伝えします。
1. 対象となる財産
令和6年1月1日以降に贈与により取得する財産
2. 改正内容
・暦年課税の基礎控除とは別に、課税価格から基礎控除110万円を控除して贈与税を
計算する
・贈与者が死亡した場合に相続税の課税価格に加算される贈与財産の価格は基礎控除を
控除したあとの金額で計算する
具体例で考えてみましょう。
例えば「令和6年に2,500万円を贈与し、7年から26年の20年間は毎年100万円ずつ贈与した」とします。
(改正前)
贈与税…申告は6年から26年の21年分、納税額の合計は400万円
相続税財産価格の加算…対象は6年から26年の21年分、総額は4,500万円
(改正後)
贈与税…申告は6年の1年分、納税額の合計は0円
相続税財産価格の加算…対象は6年の1年分、総額は2,390万円
暦年贈与の加算は基礎控除「前」の金額ですが、相続時精算課税制度の加算は
基礎控除「後」の金額となります。暦年贈与の加算期間が延ばされる方向となるため、
毎年110万円以下の贈与を長期にわたって行う場合は相続時精算課税制度を選択した方が
有利になる場合も増えると考えられます。
これまで相続時精算課税制度は使いにくいという批判もあり、
暦年贈与で相続対策を進めておられた方も多いと思われますが、
今回の改正を機に改めて検討してみるのもよいでしょう。