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長期平準定期保険とは

2024.12.09 高槻事務所

1. 法人で加入する保険

 会社の経営者の生命保険は、個人でも加入することができますが、法人でも加入することができます。
つまり、会社が契約者で受取人、経営者が被保険者となる契約です。
この場合、保険金は会社が受け取りますので、会社が個人に支払わなければなりませんが、
支払う手段として生前または死亡時の退職金を活用することができ、
役員報酬よりも税金の負担を軽くすることができます。

 

2. 定期保険

 かつて経営者向け保険商品の代表例は、10年定期保険でした。
10年定期保険とは、保険期間が10年間と決められている死亡保険のことです。
10年間のうちに死亡または高度障害状態になった場合には、保険金が支払われます。
 しかし、死亡などの事態が起こらなかった場合、10年後に契約終了となります。
満期保険金の受け取りはなく、解約返戻金もありません。
 つまり、終身保険のように貯蓄性が無く、掛け捨てなのです。
 しかし、10年ごとに契約更新する必要があり、更新するたびに保険料が高くなっていきます。
高齢になるにつれて、死亡する確率が高くなるからです。
 このような10年定期保険が盛んに販売されたのは、生命保険で貯蓄など行うべきではなく、
事業継続のために最低限必要な保障額だけを確保すべきだという考え方に基づいているからです。

 

3. 長期平準定期保険

 貯蓄性のないという定期保険のデメリットを補うべく、近年代表例となっているのが長期平準定期保険です。
長期平準定期保険とは、保障を受けられる保険期間がとても長く設定される定期保険です。
契約時の年齢に関わらず、満期は95歳や100歳など長い契約となるものが一般的です。
この場合、保険金や保険料は満期になるまで一定です。
 また、途中解約すると解約返戻金が支払われます。
この点、払い込んだ保険料の合計額に対する解約返戻金の割合のことを「解約返戻率」といいますが、
この解約返戻率は、契約後ゆるやかに上昇していき、一定期間の経過後にピークを迎えたあと、
下降していき、満期になるとゼロとなります。

 

4. 保険料をいつ損金算入できるか

 長期平準定期保険は、保険料の一部を損金算入することができます。
令和元年7月8日以降の契約については、最高解約返戻率(=契約期間中にピークとなる解約返戻率)によって、
次のような処理になります。

・最高解約返戻率50%以下又は最高解約返戻率50%超70%以下かつ年間の支払保険料が30万円未満

  全保険期間とも支払保険料の全額を損金算入

・最高解約返戻率50%超70%以下かつ年間の支払保険料が30万円以上

  ①保険期間の最初の40%まで(※) 支払保険料の60%を損金算入、40%を資産計上

  ②保険期間の40%から75% 支払保険料の全額を損金算入

  ③保険期間の75%から満期 支払保険料の全額+資産計上金額の償却分を損金算入

・最高解約返戻率70%超85%未満

  ①保険期間の最初の40%まで 支払保険料の40%を損金算入、60%を資産計上

  ②保険期間の40%から75% 支払保険料の全額を損金算入

  ③保険期間の75%から満期 支払保険料の全額+資産計上金額の償却分を損金算入

・最高解約返戻率85%超

  ①最高解約返戻率となる期間まで(一部例外となる場合あり)

   支払保険料×最高解約返戻率×90%(11年目以降70%)を資産計上、残りを損金算入

  ②①以降解約返戻金が最高額となる期間まで

   支払保険料の全額を損金算入

  ③②以降満期まで 支払保険料の全額+資産計上金額の償却分を損金算入

※例として保険期間が50年かつ年払契約であれば、

  ①は1年目から20年目(=50年×40%)、②は21年目から37年目(=50年×75%)、

  ③は38年目から50年目の支払分を指します。

 最高解約返戻率が高いほど最初の方は損金算入できる金額が少なく、
逆に最後の方は支払っている金額よりも多くなります。
 そのため、保障内容はもちろん、経理処理がどうなるかも契約前にきちんと確認しておく必要があります。

 

5. どのように活用するか

 最高解約返戻率が100%を超えることはありません。
そのため、一見戻ってこない分があるので保険をかけることが損になるのではないかと思われるかもしれません。

 しかしこの戻ってこない分は、退職前に亡くなった場合の死亡保障に対する自然保険料
(=保険料のうち年を取るほど死亡率が上昇することを見込んだ分)だと考えれば、それほど高いものではありません。
同様の死亡保障を定期保険の更新を続けることでカバーするとすれば、保険料の合計額はもっと高くなるはずです。

 一方で、解約返戻金を退職金の財源とすることができることもメリットとなります。

解約返戻率80%であれば、支払保険料の累計額の80%が会社に戻ってくるということです。

これを財源として退職金を支給すればよいでしょう。
会社は、一定の金額まで退職金を損金算入できる上、
受け取る経営者は退職所得として役員報酬としてもらい続けるよりも所得税負担を軽くすることができます。

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