相続に関する失敗事例その2 ~法定相続人以外の口出しが招いた悲劇~
以前に取り上げた相続に関する失敗事例では、主に目先の相続税を安くすることに捉われた結果
起こりやすい事例を取り上げました。
今回は、相続税が発生する・しないに関わらず起こりうる失敗事例をご紹介します。
被相続人:父X
法定相続人:母Yと長男A、長女Bの3人
相続財産:自宅(XとYが同居)、預貯金2,000万円
自分達で調べてみたところ、3人でどう分けても相続税はかからないことはわかりました。
あとは財産をどう分けるか3人で協議した結果、AとBは現役世代でしばらく一定の収入がある一方で、Yは
介護や病院代でこれから要りようがあるだろうということで、AとBには預貯金のうち200万円ずつ、
残りの財産はYにということでまとまりました。
その日の夜、Aは妻Cに結果を報告しました。
するとCは「お義父さんの介護でどれだけ私が世話したと思っているの?
それにあなたの法定相続割合は4分の1あるはずなのに、200万円だけもらって終わりはないでしょ!」
と怒ってしまいました。結局Cは実家に行って分割協議をやり直せと訴えました。
介護で世話になった手前YとBは反論できず、さりとて納得がいきません。
その後Bも夫Dに相談すると、「自分も参加する」と言ってきました。
またYはYで、近所の知り合いの(自称)法律にちょっと詳しいPに仲裁に入ってほしいと頼んでしまいました。
結果、話し合いにはY、A、B、C、D、Pの6人が参加しましたが、かえって意見がまとまらず、
当事者でないCやDを説得する時間の方が長くなりました。しかも年に数回会う仲だった3人ですが、
この事件以降AとBが実家に帰ってくることはなくなりました。
遺産分割協議に法定相続人以外の人が意見すると余計に収拾がつかなくなります。
相続人それぞれの事情や状況などを考慮して決められるべきものですから、
Cのように杓子定規に意見するのが常に正しいとは限りません。
Dは妻を守りたいという思いだけかもしれませんが、他の法定相続人には財産を少しでも
多く貰おうとしているのではないかという疑念を持たれかねません。
ましてやPのように(親族でも専門家でもない)世話を焼きたいだけの第三者が入ってくれば、
かえって混乱するだけです。
また、法定相続人も軽はずみに協議の結果を知人等に口外すべきではありません。
相続税が発生しそうで税負担を考慮して決めたいのであれば税理士にまずは相談しましょう。
また、税負担の問題以前に財産を誰が相続するかそのもので揉めそうであれば弁護士に相談するのがよいでしょう。