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事業承継の際の税務手続きについて

2020.08.10
事業承継でお困りの方

親子間で医院承継を行う際のトラブルについては以前にお伝えしました。

「事業承継 親子承継の事例」

 

では、実際に承継があった場合に、税務上、どのような手続きが必要になってくるかをご紹介します。

今回は個人医院を子供に継がせる場合について各自行う税務手続きについて解説します。

 

1.親側の手続き

どういう方法で承継するかによって納税の有無が変わる点に注意してください。

また贈与、譲渡による承継の場合、廃業届を税務署に提出することを忘れないようにしましょう。

 ・贈与

  子に医院を継がせると贈与税が発生します。申告者は贈与を受けた子になるので、親に対して税負担は発生しません。税金を負担してもらうのも悪いし…と贈与税を肩代わりすると、その金額も贈与税と対象となってしまうので注意が必要です。

 ・譲渡

 承継時に、子から親へ金銭の受け渡しをもって行う方法もありますこの場合親は譲渡を行ったということで譲渡所得の申告を行う必要があります。譲渡を行った年の翌年3月15日が申告期限となります。

 ・相続

 通常の相続の場合、相続発生前に行う税務手続きは特にありませんが医院の評価額が多額になりそうな場合、相続時精算課税制度を利用すると税負担を抑えることができるかもしれません。相続時精算課税とは事前に財産を生前贈与し、相続時に贈与時の価格で相続税の計算をするというものです。事業が好調である場合、医院の財産は増加していくため、先に贈与しておくことで普通に相続するよりも相続税を抑えることができる可能性があります。ただし、ユニットや建物の価値は年々減少していくため、不動産と器具備品を贈与しておき、子供には賃料として支払う流れを作れば親の所得税の節税対策にもなります。

 

2.子側の手続き

親と同じく承継方法によって納税の有無が変わります。承継後は開業届を税務署に提出しましょう。

 ・贈与

 受贈者である子については贈与税が発生します。贈与が発生した場合、その贈与を行った年の翌年3月15日までに申告を贈与税の申告を行う必要があります。

 ・譲渡 

 親から医院を買い取った場合は特に申告する必要はありません。購入した資産は、事業の経費として計算します。

・相続

 相続で引き継いだ場合はその医院は相続税の対象となります。また、相続した医院の自費診療が多額の場合引継いだ年から消費税の納税義務者となる可能性もあるので、相続発生までの売上が1000万円を超えているかは確認しておきましょう。

 

承継は何かしら問題が発生やすいので、円滑に行うためにはどうすれば良いか考えがちになります。しかし承継後の税務調査を考えると税務手続きをおろそかにはできません。承継後の流れについても事前に把握しておいた方が良いでしょう。