事業承継 親子承継の事例
2020.06.01
事業承継でお困りの方
今回は、事業承継において最もポピュラーな個人医院の親子承継の事例を紹介したいと思います。親子承継とは文字通り医院を親先生から子先生へ代替わりするということですが、前提として医院は同じでも手続き的には下記となります。
・原則として、医療法上は開設者の交代、税務上は事業主の交代を意味する(親先生廃業・子先生開業)
・継いだ後の医院の利益は、子先生の事業所得となる
・親先生も承継後診療を続ける場合などは、子先生が親先生に給与を支払う形をとることができる
・スタッフの雇用主も子先生に変わる(親先生から退職、子先生へ入社)
それでは、事例をみていきましょう。
【事例概要】
・親先生(父・母)60代、子先生40代
・医院はテナントで老朽化
・スタッフはそのまま引き継ぐ予定
・承継後も親先生は診療を続ける
【問題点・課題】
- 個人事業のままがいいのか、医療法人にした方がいいのか
- 資産の引き継ぎ方はどうすればよいか
- 資産の引継価額、親先生の給料はどれぐらいに設定すればいいのか
- 新患が伸び悩んでいるがその対処法は?
【対応策・顛末】
上記問題点・課題の対応策として下記を検討しました。
- 医療法人化シミュレーションを行った
- →シミュレーションをした場合、法人にした方が税金としては約100万円節税できることがわかりましたが、医療法人になると社会保険加入など資金流出も多いため結果として実質収入(可処分所得)も約160万減少するという結果になりました。よって、法人化しなくても節税対策はできると考え、個人事業のまま承継しました。
- 資産の引き継ぎ方について「贈与」「譲渡」「賃貸」それぞれを検討した
- →「贈与」「譲渡」「賃貸」を行うことによって、それぞれ異なる税金が発生します。詳細は省略しますが、まとまった資金を捻出するのが困難ということもあって「賃貸」を選択しました。
- 資産価値、勤務実態等から親先生に支払う賃料と給与を設定した
- →親先生にとって、承継後の収入は医院からの賃料と給与になります。もちろん実態から金額を設定するのが原則ですが、年金など他の収入も含めて親先生の承継後の実質収入(可処分所得)がどうなるのかをシミュレーションすることも重要です。結果、賃料については資産価値、親先生の当該資産に伴う借入金・リース料等を鑑み月20万、給料については年金をもらえる歳までは父・母それぞれ20万ずつ、年金をもらえる歳になったら勤務日数を減らし父・母それぞれ10万ずつ支給ということになりました。
- 新たな新患対策を実践していった
- →まずWeb対策としてホームページがなかったためすぐに作成し、EPARKなどを使ってネットでも予約できる体制を作りました。また、あらたな患者層を得るために矯正診療を積極的に開始したのも新患対策の1つです。
以上のように、事業承継するにあたっても色々な手法があるため、よりいい形で続けられるようあらゆる面からのシミュレーションが必要です。その結果、本事例の医院は承継してからもうすぐ10年となりますが、今でも収入・患者数は安定したまま医院経営を続けられています。