重加算税が課された調査事例
相続税申告において、本来納める額よりも少なく申告したり、申告すべきところ無申告だった場合に、加算税が課されます。
その内の重加算税とは、読んで字のごとく加算税のなかで最も重いものです。
本来納める額よりも少なく申告した場合は過少申告加算税、無申告であった場合は無申告加算税などが課税されるのですが、
課税内容を「隠蔽・仮装」した場合に、その過少申告加算税などに代えて重加算税が課税されます。
重加算税の税率は、過少申告の場合35%、無申告の場合40%と非常に重い処罰です。
今回は、税務調査において、どういった場合に「隠蔽・仮装」と見なされ、重加算税が課されたのか、事例を紹介します。
<事例①>
被相続人名義の多額の資産保有が想定された調査対象者について、相続税無申告のため調査に着手した。
臨宅調査において、調査対象者は、被相続人の相続財産について申告が必要なほどの財産はないとしたため、金融機関調査を実施したところ、次の事実を把握した。
・相続開始の約1年前からATMで計96回にわたり、約7,000万円が出金されていたこと
・被相続人は相続開始日時点で約1.3億円の預金残高があったこと
調査対象者は、この預金も相続財産であり、相続税の申告が必要だと認識しながら、意図的に申告をせず、調査でも虚偽の答弁を繰り返したことを認めた。
<事例②>
生前、被相続人名義の預金口座より多額の不明出金があり、使途解明のため調査に着手した。
調査において、相続人である調査対象者が契約している貸金庫を確認することについて、
当初は協力を得られなかったが、相続財産を確認するために必要であることを再度説明し、
調査対象者の承諾を得て、2つの金融機関の貸金庫内を確認したところ、合計約1,800枚(約3億円)の外国金貨を把握した。
調査対象者は、相続開始後に被相続人が契約していた銀行の貸金庫から同金貨を発見し、
そのまま自身の貸金庫に移し替えたものであることを認めた。
また、移し替えた外国金貨が相続財産であることを認識していたにもかかわらず、相続税の負担を免れるため、故意に税理士に伝えず、外国金貨を除外して申告したことを認めた。
<事例③>
相続開始前に被相続人名義の預金口座より多額の現金出金があり、相続財産の申告漏れが想定されたため、調査に着手した。
臨宅調査では、調査対象者は、預金は申告したもの以外は分からないとしたため、金融機関調査を実施し、次の事実等を把握した。
・被相続人は、申告された現金の金額を大幅に超える多額の現金を出金していたこと(約3億円)
・被相続人が開設して入金した家族(相続人等)名義の預金があること(約1億円)
再度臨宅調査を実施し、調査対象者は、被相続人が出金した現金を被相続人宅等で保管していたこと、また、被相続人から家族名義の預金通帳を預かっていたことを確認した。
調査対象者は、被相続人から渡された現金や家族名義の預金が相続財産に含まれることを知りながら、他の相続人や税理士には告げず、申告から除外した事実を認めた。
以上のように、相続人がミスではなくて意図的に嘘をついた場合、重加算税が課されることになります。
重加算税が課されることにより、当初から正しい申告をしていた場合と比べて、税負担が大きく変わってきます。
日頃から正しい申告に努めることが大事ですね。