最新の裁決事例にみる名義預金のポイント
相続税の調査において名義預金は気を付けるべきポイントの一つです。今回は令和3年9月17日裁決の事例から名義預金のポイントを確認します。
本件では被相続人の長女名義の預金口座が相続財産に含まれるか否かが争われました。名義預金か否かの判断にあたっては、贈与成立の有無と通帳及び印鑑の保管状況、口座入金状況をポイントとしていました。
まず、贈与成立の有無にあたっての検討についてですが、本件では贈与による資金移動に際して、生前、被相続人が贈与証を作成していました。しかし、贈与証には被相続人の署名のみで、受贈者である長女の署名はありませんでした。通常、この状況では、贈与契約の成立の証拠とはなりえませんが、贈与証作成当時、受贈者は未成年であり、かつ、被相続人は長女を認知前であったため、親権者は母親のみでした。これらを踏まえて、長女が成年に達するまでは、本件母親は、長女の法定代理人として、その財産に関する法律行為について、その長女を代表してその財産を管理する立場にあったことが認められ、その母親が当該贈与証の存在を認知していたことから、贈与証による贈与契約が有効に成立していたと認められています。
また、通帳及び印鑑の保管状況についてですが、預金口座の名義人である長女は、本人で通帳及び印鑑を保管しておらず、口座に入金がある期間中、その存在を認知していませんでした。口座名義本人が管理していない場合、通常は名義預金と判断される可能性は高くなりますが、本件の場合、名義口座に入金があった期間中、長女の母親がいずれも管理していたことから、母が管理する長女名義の口座に有効な贈与契約による入金があったものと判断されました。
結果、本件では預金口座が長女に帰属すると認められ、名義預金とは認められませんでした。名義預金における今回のポイントは以下の通りです。
<ポイント>
未成年の親等で財産管理人が限定される場合には、その親権者の管理、認識が重要となる