相続税とふるさと納税

ふるさと納税は、自身で選んだ地方公共団体へ寄附を行った場合に寄附額のうち2,000円を超える部分を寄附金控除を通じて税額控除を受けられる仕組みであり、現在広く使われている制度です。
ふるさと納税は通常、所得税・住民税の控除制度として知られていますが、
相続財産を寄附する場合には相続税の非課税規定との関係も考慮する必要があります。
相続財産の寄附(贈与)に関する制度として措置法70条1項(国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等)があります。
相続又は遺贈で取得した財産を国や地方公共団体等に贈与した場合、
贈与者等のその贈与した財産の価額は、相続税の課税価格に算入しないと規定されているものとなります。
相続等で取得した現金について、
ふるさと納税を利用して寄附(贈与)した場合も地方公共団体への寄附であるため、同規定の適用対象となる可能性があります。
具体的に措置法70条1項の要件としては下記のものがあります。
① 相続または遺贈により取得した財産を寄附すること
② 相続税申告書の申告期限までに寄附を完了させること
③ 寄附先は、国、地方公共団体、特定の公益法人等であること
④ 相続税等の負担が不当に減少する結果と認められる場合でないこと
上記①の要件から相続財産をそのまま寄附する必要があるため、
株式や不動産を相続後に売却した資金で寄附する場合には適用できません。
また②の要件から遺産分割協議が長期間に及び申告期限を経過してしまった場合も適用対象外となります。
相続等で取得した現金について、ふるさと納税を利用して地方公共団体に寄附した場合の手続としては、
地方公共団体から交付された寄附金受領証明書を申告書に添付することのほか、
相続税の申告書第14表の「特定の公益法人などに寄附した相続財産又は特定公益信託のために支出した相続財産の明細」に寄附年月日や寄附した財産の明細などを記載して提出する必要があります。
ふるさと納税は所得税・住民税の寄付金控除制度で、措置法70条1項は相続税の非課税制度です。
両方の適用要件をきちんと満たしている場合には、解釈上、両方の適用が想定されます。
実際に適用できるかどうかについては、お気軽にご相談ください。

