法人に対する遺贈
相続において財産を承継できるのは原則として法定相続人のみです。
法定相続人以外の人や法人に財産を承継させることを「遺贈」といいますが、遺贈をするには生前に遺言書を残しておくことが必要です。
相続税が発生する場合、法定相続人に加え、遺贈により財産を取得した「人」も相続税を申告・納税する必要がありますが、遺贈により財産を取得したのが「法人」の場合は、税金はどのようになるのでしょうか。
※以下、法人は普通法人であることを前提とします。人格なき社団・財団など特殊法人に遺贈した場合は取扱いが異なりますのでご注意ください。
1. 相続税
相続税の申告義務があるのは相続又は遺贈により財産を取得した「人」のみで、「法人」は対象外です。
よって、法人に対して相続税がかかることはありません。
また法人に遺贈された財産は相続財産からは除外され、残った財産に基づいて相続税の計算をします。
2. 譲渡所得
遺贈した財産が不動産や株式、金地金など譲渡所得の対象となる場合、(実際に金銭のやり取りはないものの)被相続人から法人に時価で譲渡したとみなされます。
よって、譲渡益が生じている場合は、被相続人に対して譲渡所得がかかります。
この場合、準確定申告として法定相続人が申告・納付することになります。
法定相続人は実際には財産を受け取っていないにもかかわらず、その財産に対する税金を納めることになるため注意が必要です。
3. 法人税
遺贈を受けた法人は、タダで財産をもらったとして受贈益が計上されます。
その受贈益に対して法人税がかかります。
4. 贈与税
法人が同族法人である場合、法人に遺贈したことにより受贈益が計上され、その結果株価が上昇することになります。
その結果、被相続人から株主に対してその株価上昇分を贈与したことになり、株主に贈与税がかかります。
被相続人の相続税が多額になる場合、法人への遺贈は相続税の対策にはなります。
一方遺贈する財産の価値によっては、他の税金が増えてトータルでは損になる可能性もあるため慎重な検討が必要です。