節税対策~「短期前払費用の特例」の活用~
節税対策の1つとして、今回は「短期前払費用の特例」を取り上げたいと思います。
皆さん、「家賃を1年分前払いすれば、その支払った費用は今年の経費に落とすことができる」といったことを聞いたことありませんか? これがいわゆる「短期前払費用の特例」で、1年以内の前払費用についてはその支払った事業年度で経費計上することができるというものです。
例えば個人事業主で、家賃を月払いしていたが今年の12月に年払契約に変更し、翌年1月~12月分を12月末に前払いした場合は、今年に限っては月々支払ってきた1年分家賃+12月に支払った翌年1年分家賃の計2年分家賃を経費として落とすことができるということです。利益が大幅にでる年とかにこの特例を活用すると効果的ですよね。
ただし、注意点がいくつかあります。
- 等質・等量の役務(サービス)提供の対価であること
- 支払った日から1年以内に役務(サービス)の提供を受けるものであること
- 翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
(売上原価となるような収益と直接対応させる必要のある費用は対象外)
- 当期中に支払が済んでいること
- 毎年継続して同じ経理処理をすること
まず(1)についてですが、継続的な経費であれば何でもOKというわけではなく、役務(サービス)の提供の対価でないといけません。よって物品の購入費用は対象外ですので、例えば新聞や雑誌の購読料などは、それが先1年分の購読料であっても特例の対象とはなりません。
また、その役務(サービス)が等質・等量であることも重要です。よく言われるのが税理士への顧問報酬を1年分前払したらいいのでは?といったことですが、税理士のサービスは等質・等量のサービスといえないため要件にはあてはまらず対象外です。よって適用できる費用としては、家賃やリース料、保険料などが考えられます。
また(2)については「支払った日から役務(サービス)の提供を受けるもの」ということが重要です。例えば翌年1月~12月分の家賃を今年の11月に支払った場合は、支払った日からの役務ではないので対象外となります。支払日には注意が必要ということですね。
それから(5)の毎年継続して同じ経理処理をするということもポイントです。家賃を例にあげると、今年年払契約に変更して短期前払費用の特例を適用し、その後すぐに月払契約にまた戻すといったことはNGです。一度12月に年払いで支払うようにしたら、翌年も12月に先1年分を年払いするといった形を継続しなければいけません。
この短期前払費用の特例は経費計上できる金額が多額になるケースも多いことから、当年に限ってではありますが節税効果は大きいと思います。しかしその反面、きちんと要件をみたしてなければ税務調査で否認されてしまうリスクも大いにあるため、適用する際には十分な注意が必要です。