医療法人成りとMS法人化の違い
先生方とお話ししていると、同業の先生から「売上が上がってるけど医療法人にならないの?」と言われたと相談を受けることが多々あります。その際に法人成りのメリット、デメリットを説明させていただくのですが、法人成りするケースとMS法人の設立を行うケースがあります。今回はこの2つの違いについて説明させていただきます。
医療法人は各都道府県の認可をもらうことで設立することができます。不動産賃貸等の医療業務以外の事業を行うことはできませんが、分院を新設できたり医院の拡大を行いやすくなります。また法人名義で生命保険を契約することができ、退職金の積み立ても行うことができます。
ほとんどの先生が想像されているのは法人成りすることで節税のメリットがあるということだと思われます。個人の場合累進課税により課税所得に応じて所得税率が最高45%かかります。法人税の場合、課税所得に対して約30%の税率が一律でかかります。税率で判断すると、課税所得が1,000万円を超えるような医院は節税のメリットが大きいと考えられます。また、ご自身に役員報酬を支給できることも節税のメリットといってよいでしょう。
しかし、法人成りすると社会保険への加入義務が発生し、スタッフの方の保険料の半分を法人で負担することになります。加えて理事長や家族も加入対象となります。節税ができても社会保険料の支払いが増額し、差引でマイナスになることが多いです。また、個人事業と違い資金を自由に使えることができなくなります。このため個人事業主であった時よりも使えるお金が減ってしまう可能性が考えられます。
MS法人は各都道府県への認可が必要ない一般的な株式会社と同じ形態です。医療法人ではできない医療目的以外の営利事業を行うことができます。医療法人と同様に所得を分散することで節税のメリットがあります。具体的には技工物作成の委託や、車や機器を個人へリースするといった目的で運用していることが多いです。
デメリットとしては医療行為そのものは事業として行えないことと、医療法人と同じく社会保険の加入義務が発生することが挙げられます。
詳細なシミュレーションを行わないと自分の医院が法人成りのメリットがあるかが分かりずらいため、気になっている方はぜひ会計事務所へ相談してみてください。