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勤務医による優秀なスタッフの引き抜き

2018.11.10
開業中の方

勤務医が独立することになり、祝福ムードである一方、その勤務医が密かに優秀なスタッフの引き抜きを画策している場合があります。

そのような引き抜きが発覚したら、まずは勤務医とスタッフ両者と個別に話し合いの場を持ちましょう。院長先生としては感情的になってしまいがちですが、ここは冷静になって事実確認を行ってください。

事実確認の結果、スタッフ自身の意思で独立予定の勤務医についていくということであれば、無理に引き留めずスタッフ本人の意思を尊重しましょう。優秀なスタッフであれば引き留めたいところでしょうが、仮に説得して自院に留まることになってもそのスタッフとの関係がぎくしゃくしてしまい、クリニックの運営に支障をきたす可能性も十分考えられますので、無理矢理引き留めることはお勧めしません。

このような事態が起こった場合、スタッフの引き抜きを行った勤務医に対して法的制裁を与えるべきだと考える院長先生もいらっしゃるかと思います。ただ実際のところは、大量かつ一斉に従業員を引き抜くなど、転職の域を超え、社会的相当性を逸脱する程度のものでないと損害賠償請求は難しいと考えられます。したがって、院長先生がまず取り組むべきことは、このような引き抜き行為が行われないような対策を実行することです。

例えば、就業規則の服務規律に在職中の引き抜き行為を禁止する旨を定め、引き抜き行為を懲戒解雇事由として規定しておけば、引き抜く側の勤務医に対して大きな牽制をかけることができます。また、勤務医を雇用する段階で、スタッフの引き抜きを行わないことを記載した誓約書を交わすことも有効です。

あと、もうひとつ実行すべき重要なこととして、「スタッフがもし引き抜きにあったとしてもスタッフが留まりたいと思うクリニックづくり」が挙げられます。院長先生は日ごろからスタッフと密にコミュニケーションをとって信頼関係を築いていって下さい。スタッフの声に耳を傾けてスタッフの就業環境を整えていくことが非常に大切です。そうすれば、引き抜きの誘いがあったとしても、スタッフは自院に留まってくれるはずです。