経営お役立ち情報 column

法人にするにあたっての注意点

2024.07.15
開業中の方

 

個人医院としてある程度利益がでてきたら、節税の一環として法人成りの検討を進める方も多いと思います。

そこで今回は、法人成りの特徴・注意点をまとめてみました。

 

  • 1. 役員の確保

医療法人の役員とは理事及び監事のことをいいます。原則として、理事3名以上、監事1名以上を置かなければいけません。(知事の認可を得て理事数を3人未満にすることは可。)

そして理事や監事全員が医師又は歯科医師である必要はありませんが、原則として理事長はその中の医師又は歯科医師である理事から選ぶこととなっています。

よって、これら理事・監事の人員確保ができなければ、そもそも医療法人が設立できないということです。

 

  • 2. 社会保険の加入

 個人事業の場合、スタッフが5人未満の場合は事業所として社会保険に加入しなくてもいいのですが、法人にした場合はスタッフの人数に関係なく社会保険の加入が強制となります。よって協会けんぽの健康保険・厚生年金は保険料の半額が医院負担であるため、その分コストが増えるということです。

医師国保・歯科医師国保加入の場合は保険料半額負担の必要はありませんが、厚生年金加入だけでも医院負担保険料は給与賞与額の9.15%、さらに健康保険も協会けんぽの場合は医院負担保険料がプラス約5~6%(都道府県によって違います。)。

結果的に人件費が約9%~15%増加することになり、それだけキャッシュアウトが増えることとなります。

 

  • 3. 理事報酬の範囲内で生活

 個人事業の場合、儲かった利益(残ったお金)はすべて自由に使えますが、法人にした場合は、儲かった利益は法人のものであり、理事が個人的に自由に使えるお金は法人からもらった理事報酬の範囲内ということとなります。いわゆる普通のサラリーマンと同じ状況と言え、また理事報酬は税務上原則として期中で金額を変更することはできないので、報酬の金額設定には慎重を期する必要があります。

 

  • 4. 出口戦略

 医療法人は株式会社と違い、非営利性の観点から利益の分配(配当)ができません。よって将来もし解散するとなった時に財産が残っている場合は、その財産は国に没収されることとなります。

 もし後継者がいない場合はM&Aにより売却するというのも1つですが、うまくいくという確実性はありませんので、法人に財産が残りすぎないようあらかじめシミュレーションしておく必要があります。

シミュレーションのポイントとしては、下記のとおりです。

・あと何年でリタイアする予定か

・今のままだとどれぐらい財産が残るか

・リタイアする時、退職金はどれぐらいとれるか

・財産を残さないためには今後どれぐらいの理事報酬設定が妥当か

(税負担・社会保険料負担も考慮)

・財産を残さないために、他に対策はないか

 

 

一度法人にしてしまったら、そこから個人事業に戻すことはなかなか難しいのが現状です。よって上記のこともしっかり検討したうえで、法人成りを進めていくことが必要でしょう。