医療法人成り
節税のために医療法人成りをするという話がありますが、税金の額だけに注目すると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。医療法人成りでは何に注意をすべきでしょうか?
1.社会保険料
個人事業主の場合には、市町村国保・国民年金に加入しています。これらの年間金額は二つ合わせて、多くても約120万円くらいです。
医療法人の場合、先生は理事長として、法人から給料が支給されるため、協会けんぽ・厚生年金に加入する必要があります。保険料額は給与額によって変わりますが、仮に月額100万円の給料ですと、年間の保険料額は法人負担分も合わせて、約300万円になります。
協会けんぽ・厚生年金のほうが、保険内容が充実しているため、一概に金額のみでは比較できませんが、ほぼ確実に社会保険料が増加します。税金の減少額より社会保険料の増加額が上回れば、節税の意味が薄れてしまいます。
健康保険で歯科医師国保に加入している場合には、医療法人となっても、歯科医師国保に継続加入できますので、健康保険の金額は変わりません。年金保険の金額のみ変わります。
2.可処分所得
可処分所得とは先生自身がプライベートで自由に使えるお金のことです。個人事業主の場合には、医院経営で増えたお金は、全て先生自身のモノですので、先生が自由に使っても何も問題がありません。ただし、医療法人の場合には、増えたお金は、医療法人のモノであり、先生のモノではありません。医療法人の通帳のお金は自由に使うことができず、先生が自由に使えるお金は、給料で支給された金額のみです。節税のために、医療法人を設立した場合には、可処分所得は減少します。
医療法人成りは、メリットも大きいですが、デメリットもあります。一度、医療法人を設立した場合には、個人事業主に戻ることは煩雑です。メリット・デメリットを十分に理解した上で医療法人成りを検討しましょう。