勤務医を外注扱いにできるのか
医院で別の医師を働かせる場合、「雇用」という形態を取ることが通常多いと思われますが、場合によっては諸々の事情で「外注」扱いとして働かせたいというケースもあったりします。
この場合、「雇用」と「外注」の区別はどのように付けたら良いのでしょうか。
実は「雇用」と「外注」は明確な線引きはなく、実態を踏まえて総合的な判断で決定することになっており、過去にも数多くの裁判が行われてきました。
平成21年に大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて通達が出ました。
具体的には以下のような内容を確認していくことになります。
①他人が代替して業務を行えるか
その仕事を請け負った外注である勤務医は、別の勤務医に仕事を投げることも可能です。
その勤務医にしかできないような規則がある場合、給与であるとされる可能性が高くなります。
②先生(事業主)が時間的な拘束を行えるかどうか
従業員は営業時間中の勤務を指示されており、労働契約書にも時間帯を記載されていると思われます。
外注の場合、雇用関係はないため営業時間に縛られる必要はありません。
例えば何人診療したら終わりというように、目標を達成できればいつ来ていつ帰るかは自由である必要があります。
契約書に勤務時間の表記がされていると、雇用しているとみなされる可能性があります。
③作業の内容について先生が指揮監督を行うかどうか
外注である勤務医は先生との主従関係はないため、従業員のように先生の指示に従う必要はありません。
勤務医が自分の判断で作業をできないような環境である場合は従業員と同等とみなされる可能性があります。
④成果物が滅失した場合に報酬をもらえるかどうか
大工のケースの場合、完成した家を引き渡すことで契約を満たすことになるため、もしその家が火事で無くなった場合は契約を満たしていないことになり、報酬を支払う必要はなくなります。
医院の場合、例えば治療できなかった日があっても通常通りの報酬を先生が支払った場合、外注としての条件を満たしていないといわれるかもしれません。
⑤材料や器具を先生が供与しているか
先生が自身で購入したハンドピース等の器具を使っているのと同様に、外注の先生も同様に自身で用意した器具を使う必要があります。
他の勤務医や衛生士のように医院の器具を使っていると従業員とみなされる可能性があります。
外注にしたいからといって契約書を作成したとしても、税務調査が来た際にはその実態について調べられ、外注か給与かの判断をされます。
特に外注費が給与所得となってしまうと、消費税の仕入れ税額控除ができなくなることと、給与に対する源泉所得税の納税義務が発生してしまい、大きな負担となってしまいます。
これで大丈夫かな、と思ったらぜひご相談ください。
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