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居抜きと承継、どちらが良いか

2020.09.21
経営お役立ち情報

歯科医院を開業する際に、居抜きの物件ありませんか?と聞かれることがあります。

不動産情報やM&Aの売却案件でも紹介されているので、開業準中の方は目にすることも多いと思います。

 

今回は、歯科医院の「居抜き」と「承継(第三者承継、M&A)」について解説します。

 

まず、出回っている案件としても、比較的多いのが「居抜き」です。

内装や設備をそのまま使って、開業の設備投資を抑える方法です。飲食店の開業でもよく見受けられるかと思います。

基本的には歯科医院が閉院したのち、空きテナントになっているところを借りて開業することになります。

事業承継とは違って、スタッフや患者さんを引き継ぐわけではありません。カルテ等が残っている場合もあるかもしれませんが、患者さんに同意なく引き継ぐことはできないでしょうから、実質的に新規開業と同じと考えてよいでしょう。また、一旦、前医院を退職したスタッフに声を掛けてもらえるケースもありますが、既に他で勤務している場合もあり、引き継がないケースがほとんどでしょう。

 

次に、「承継」は、まだ医院が継続している段階で引き継ぐ相談、交渉を行って、医院そのものを引き継ぐ形のことをいいます。

承継は医院を丸ごと引き継ぎますので、器械や内装はもちろん、スタッフ、患者さんを引き継ぎます。承継してもらう側はあまり情報をオープンにしていないことも多いので、案件として耳にすることも少ないかもしれません。

スタッフや患者さんにもまだ伝えていない段階の事が多いので、医院名等を出して大々的に募集することは難しいという事情があります。

 

 

まとめると以下の表のようになります。

 

居抜き

承継

建物・内装工事

引き継ぐ

引き継ぐ

医療機器・備品

引き継ぐ

引き継ぐ

スタッフ

引き継がない

引き継ぐ

患者

引き継がない

引き継ぐ

営業権

なし

あり

行政手続き

新規開業扱い

遡及適用の可能性あり

 

 

営業権とは、「のれん」とも呼ばれることがあります。医院の持つ集客力や既存の患者さんを引き継ぐ対価と言えます。

 

居抜きや承継で開業を検討する際には、

「自分が引き継ぎたいものが何か」

「引き継ぐものに対する対価として妥当な金額か」

を検討する必要があるでしょう。

 

なお、承継の場合、売る側も自分が築き上げた医院があまり安い金額だと不満に思いますし、引き継ぐ側もあまりに高額だと引き継ぎ後の経営が心配で躊躇します。

また、医院をそのまま引き継がせるわけですから、承継させる側は金額面以外に診療方針や人格といったところも重視します。

結果として、承継の案件は話がまとまることは少ないように感じます。

 

居抜きや承継での開業を希望されるのであれば、常にアンテナを張って情報を収集し、案件が出てきた場合にはすぐに動けるように準備しておくのが良いでしょう。